2019/05/13
レジリエンスとは何か?
誰しもがレジリエンスを必要としています。なぜなら、逆境というものは、どんな人生においてあるものだし、日々の生活でもいくつもの煩わしさを経験するものだからです。
では、この誰しもが必要としている「レジリエンス」とは一体何なのでしょうか?
全米心理学会の説明では、レジリエンスについてこのように説明しています。
「レジリエンスとは、逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセスである。」
これだけだと説明不足ですので、もう少し、詳しく説明します。
レジリエンスという言葉はもともと、工学や物理で使われていた言葉です。
鉄などの物質や物体に外から力を加えると変形します。その時どれくらいの力なら耐えて、元の形に戻ろうとすることができるかなどという一連の力のやり取りに関係する物質や物体の持つ能力、いわゆる反発力や弾性エネルギーですね。これがレジリエンスです。
語源はラテン語のresilireやsalireとされています。「もとに戻る」とか「はね返る」という意味だそうです。
レジリエンスはその後、自然や動物の生態環境学や、人間の社会環境システム(SES)の文脈でも使われる言葉となりました。
近年、ダボス会議(世界経済フォーラム)で注目されているのは、経済的なレジリエンスであり、都市国家のレジリエンスです。
日本では、国家強靭化政策として取り組まれていますね。
心理学におけるレジリエンス
同じレジリエンスという言葉ですが、どの分野においても固有の意味合いを帯びています。基本的に共通しているのは、変形から元の形に戻ろうとする「弾力性」であったり、変形や変動に対する反応としての「復元力」や「回復力」といった意味です。
それでは、心理学におけるレジリエンス、つまり心理学的レジリエンスではどのような意味をもっているのかということです。
これがちょっと厄介なところです。
なぜなら、心理学では他の分野と違い、レジリエンスについて一貫した定義がないからです。
現在、最も広く使われ、馴染みがあるのは、「逆境に対する反応としての精神的回復力や自発的治癒力」ということではないかと思います。
なぜ心理学的レジリエンスに一貫した定義がないのかというと、良いか悪いかは置いといて、心理学は、「定義に始まり定義に終わる」という心理学特有の特徴があるからです。
ですから、言ってしまえば、学者の数だけ定義がある状態です。なんと、ある研究によれば、122個ものレジリエンスの定義が存在しているとも言われます。
レジリエンスの3つの区分
この122個の定義を大まかに3つに区分したものが、レジリエンスの説明でよく使われる嵐に遭遇した樹木の図です。
回復力としてのレジリエンス
樹木は暴風雨の中で激しく揺れ動いても、柔軟なしなやかさで元の状態に戻ってくる。最もよく研究されているレジリエンスの種類といえます。
抵抗力としてのレジリエンス
暴風雨に遇って折れたり倒れてしまう樹木とは違い、強く、太い根を張る樹木はびくともしない。レジリエンスの基礎
再構成力としてのレジリエンス
暴風雨に遭って木が全滅してしまったあとで、以前とは違う新たな樹木が芽生えてくる。主に、心的外傷後成長(PTG)として研究されているレジリエンスの種類。