ポジティブ心理学とは 生い立ちと5つの柱PERMAについて

「ポジティブ心理学」という言葉は、最近ではよく目にしたり耳にしたりします。しかし、このポジティブ心理学の正しい知見についてはあまり知られていないように思います。また、自己啓発の「ポジティブシンキング」のことだと思われている方もいるかも知れませんね。

 

そこで今日は、ポジティブ心理学について、生い立ちや特徴を解説していこうと思います。

 

ポジティブ心理学を簡単に言ってしまうと、

「人間の生活におけるポジティブな側面、つまり、幸福やウェルビーイング(よい生き方、心身ともに健康な生き方)、繁栄について研究する学問」
『ポジティブ心理学が1冊でわかる本』イローナ・ボニウェル

    ということになります。

     

    それでは、次からポジティブ心理学の生い立ちや特徴を解説していきますね。

    ポジティブ心理学の生い立ち

     

    ポジティブ心理学は、1998年マーティン・セリグマン(当時アメリカ心理学会会長、ペンシルベニア大学心理学部教授)によって提唱されました。

     

    セリグマンの主張は「従来の心理学が鬱や無気力といった精神疾患など心の弱さ、マイナス面に焦点があたる研究だったが、ゼロやマイナスになった人でもプラスに自分の力で戻って行けるような人間の強さや優れた機能を研究すべきだ」と言うものでした。

     

    ポジティブ心理学の始まりとされるのは1998年と心理学としては新しい分野ですが、その歴史的な起源は、かなり遡ることができます。

     

    例えば、「完全な人間になる」という概念を提唱(1933)したカール・ユング、個人の成熟(1955)に注目したゴードン・オールポート、メンタルヘルスの定義(1958)に取り組んだマリア・ヤホダ等が挙げられます。

     

    その中でも、ポジティブ心理学という言葉を初めて使ったとされる人間性心理学が最も注目されます。

     

    1950年台に生まれ、60~70年台の最盛期を迎えました。カール・ロジャース、アブラハム・マズローが有名です。

     

    ただ、人間性心理学は人のネガティブな面に枠組みを置くのではなく、可能性や成長、自己実現に研究の焦点を当ててきましたが、検証性に乏しく、科学的な枠組みが乏しいと批判されていました。

     

    ポジティブ心理学は、それらを補うべく科学的な枠組みを尊重する立場をとり発展してきました。

    ポジティブ心理学の特徴

     

    セリグマンは、ウェルビーイング(よい生き方、心身ともに健康な生き方)を測定する構成要素として、具体的に[PERMA]を提唱しました。

     

    ウェルビーイング(よい生き方、心身ともに健康な生き方)とは、幸福で充実した人生を送るために必要な、心理的、認知的、社会的、身体的な働きと潜在能力のことです。

     

    ポジティブ心理学では、ウェルビーイングを持続、向上させるためには、その構成要素である[PERMA]の向上を目標としています。[PERMA]それぞれのレベルを引き上げていくことで全体的に向上させるとしています。

     

    PERMA 5つの要素

     

    PERMAとは

    • Positive Emotion(ポジティブ感情)
    • Engagement(熱中、没入)
    • Relationship(人間関係、関係性)
    • Meaning(人生の意味や仕事の意義)
    • Achievement(達成)

    のことです。

     

    Positive Emotion(ポジティブ感情)

    ポジティブ感情の第一人者と言われるバーバラ・フレドリクソンは、「拡張・形成理論」を唱え、ポジティブ感情は個人的な成長と発展に寄与し、長期に渡る効果をもたらすとその効果を次のように示しています。

    • ポジティブ感情は私たちの思考と行動の選択肢を広げる。
    • ポジティブ感情はネガティブな感情を打ち消す。
    • ポジティブ感情はレジリエンスを高める。
    • ポジティブ感情は心理的な幅を広げる。
    • ポジティブ感情は上方向への発展スパイラルを引き起こす。

     

    ポジティブ感情は、永続的な個人的資質の育成に結びつかないような、一時的な喜ばしい感覚とは区別されます。

     

    フレドリクソンは、ポジティブ感情として、「興味」、「希望」、「愛」、「畏敬」、「鼓舞」、「愉快」、「誇り」、「安らぎ」、「感謝」、「喜び」の10項目を上げています

     

    Engagement(フロー、熱中、没入)

    Engagementとは、時間を忘れて夢中になったり集中したり、自分自身事とすら意識しないほどになっている状態のことです。アスリートの世界では「ゾーンに入っている」と呼ばれる状態です。

     

    この様な事象を発見し、「フロー」と名前をつけたのが、セリグマンと共にポジティブ心理学創設の立役者であるミハイ・チクセントミハイです。

     

    チクセントミハイはフローを次のように特徴付けています。

    • ゴールが明確で、進捗がわかる。
    • 完全に集中
    • 行動と意識の融合が起こる
    • 自己の認識や自意識を喪失する
    • コントロール感がある
    • 時間間隔が歪む
    • 行動そのものに本質的価値を見出している

     

    これらのことから、フローは

    「多くの労力を必要とする問題を、少ない労力で解決する方法」(前掲書)

    とされ、仕事の場面に特化した研究が世界中で盛んに行われています。

     

    Relationship(人間関係、関係性)

    幸福に大きく関わりがあるものとして、社会的な人間関係があるとしています。

     

    幸福を感じている学生とそうでない学生を調査した結果、大きな違いは、幸せを感じている学生は豊かで充実した生活を送っていたと言います。

    彼らは、独りで過ごす時間が最も少なく、友達とよりよい関係を築き、恋人と呼べるパートナーがいたそうです。

     

    Meaning(人生の意味や仕事の意義)

    「価値観」や「人生の目的」、「モチベーション」等長期的な視点に関することです。

     

    私たちはその人生において、様々な選択をしたり、行動を起こしたりします。

     

    そのときに自分にとって何が大切で、何を優先されるのかなどの価値観や信念をを知っておくことが、幸せに導いてくれるという考え方です。そしてそのときに必要なのが「モチベーション」であったり、価値観を反映している「人生の目的」です。

     

    Achievement(達成)

    適切な目標設定ができ、それを一つ一つ達成してくことを積み上げていくこと。その一つ一つ積み上げられた達成感が多ければ多いほど、幸福感が高まるという考え方です。

     

    人生の意味や仕事の意義と重なるところはありますが、価値があると思える目標を追求していく生き方のほうが幸せな生き方だと考えられています。

     

    まとめ~ポジティブ心理学

     

    ポジティブ心理学の生い立ちと理論の柱とも言える5つの柱PERMAについて観てきました。

     

    ポジティブ心理学は心理学分野の中では比較的新しい研究分野で、「ポジティブ」という言葉から受け取る印象から誤解も多いです。

     

    そこで今日は、ポジティブ心理学の生い立ちや理論的な5つの柱であるPERMAについて解説しました。